しばらくやる気をなくして沈黙していたのでリハビリがてらはじめた絵の制作ログです。今回はこれの他に pixiv FANBOX に公開した有料版を用意してみました。記事の内容に違いがありますが、課金したら続きを読めるようにするのではなくどちらも完成までの工程は載せつつ、無料公開版よりも詳しく記載するように差異を設けてみました。
85 Rain 2 制作ログ
制作目的
基本は何かしらの欲があるから描けるのであって、今回は昔から使用している「うちの子」が誕生したのが5月3日くらいだったのでそれに合わせて新しい絵を作るつもりでした。ちょうどその頃はネット上では沈黙していたので再開するには新規絵の公開でいいだろうと考えていたのですが、間に合ってないです。というか最初に公開したペーパーイラストを基に仕上げ直した絵はもっと間に合っていなかったです。植栽が豊富だと嫌になる傾向はどうしてもあります。
制作仕様
2019年夏に iMac Retina 4K に移行してから、画面が見えすぎて粗が分かってしまうから描いても描いても終わらなかったりタブレット上での腕の動きと合わないから描きづらかったりと延々と地獄が続いてきたのですが、やっとそれなりに描けるようになってきた感じです。
- 使用PC
- iMac Retina 4K (21.5 inch)
- Intel Core i7 3.6GHz
- 32GB 2,400MHz DDR4
- Radeon Pro 560
- ペンタブレット
- Wacom Intuos Pro Large
- Wacom Pro Pen 2 ×2, アートペン Pro Pen 2 がいつも使うものとなり芯ごとに使い分けている, アートペンはブラシの回転機能を用いる場合に使用
- 使用ソフトウェア
- Adobe Photoshop 2020
- Coolorus 2 サードパーティ製のカラーホイール, Photoshop 純正のカラーホイールは CC (2019) から搭載されているけど既に使い慣れてしまっている
- キャンバスサイズ
- 448×320 (mm) 450dpi ここに60mmの余白を追加するので全体で 6,732×9,000 (px) になる
- カラーモード, 使用プロファイル
- Adobe RGB (1998) (8bit/チャンネル)
- 制作期間
- 5月2日〜8日の6日間
未だ板タブ使用
解像度が高ければよいのかというとそうでもない
解像度を 450dpi とかなり高めにして制作していますがフルカラー画像の解像度は 350dpi あれば十分です。通常の印刷機の線数(印刷物の精度を示し1インチあたりに並ぶ網点の数、多いほどきめ細かい)が175線なのでそれの2倍あれば事足りるという伝統からこの解像度が標準として扱われています。これまでに 400dpi, 420dpi と上げつつ iMac Retina に移行してからはマシンスペックも向上したため 450dpi で制作しても重さを感じず進められていますが、細かければその分繊細さが活かせるかといえばネット向け公開では縮小してしまうため高精細の価値を活かせているようで活かせていないです。あるとするなら印刷出力でしょうか。前述したように印刷機の線数が高いならばこっちのキャンバスの解像度も高くしようという目論見はありますが、高精細が適正というわけでもないので競争するような内容でもないです。最終的に 350〜400dpi に落とします。
なお今更解像度を下げるのは、大判出力の可能性を見つけてしまった上にブラシサイズの見直しが発生するため無理があるかもしれないです。ポスター用途かそうでない絵との区別をつけていないためこのまま大きなサイズで描き続けるかもしれません。なんとも無駄な努力です。
この節の後述は pixivFANBOX の投稿に記載しています。
簡単な日の丸構図でいいからさっさと済ませる
個人的に日の丸構図な人物を正面に配したやり方は好みではないです。そのためそれを避けた絵ばかりが増えてきたので、たまにはいいだろうと考え単純な構図で済ませています。人物を中央に配置しこの環境を説明する物を散りばめるだけです。
この節の後述は pixivFANBOX の投稿に記載しています。
色を決める
デジタルペイントでは従来のアナログ絵画と異なり下地にこだわる必要があるほど色が透けることもないから、極端な変化を減らすためにあらかじめ塗りつぶす目的にとどまってしまいます。特に発色を求める箇所がセーラー服と傘くらいなので、最初から灰色をベースに仕上げていきます。
なおその下地を塗る前のキャンバスの白色を紙らしく完全な白ではないわずかなグレーな色合いに変更していますが、この辺はほとんど趣味でやっているようなものです。ただし完全な白よりも若干落とした方が明るすぎなくて見やすいです。
まだ用いる色が決まっていないですが、この段階で何種類もの灰色を用いています。ほとんどが影な上雨天のため暗くなるのでこの色合いからなるべくずれないようにしたいですが、それでも一部は変更しています(特に書割りとしての差異を設けたいため右側はかなり変わっている)。特に悩ましいのが濡れたアスファルトの色です。本当に暗い色にしてしまってよいのか、ハイライトをどの程度加えるのかが分からず塗りに関しては適当な色を置いているため、途中で何度も変更しています。
本当は実物と確認できるのが望ましいのですが、使えそうな写真が見つからないどころか写真だと反射で白く見えるため真に受けて描くにはあまりに向かない状態でした。最終的には置いてあるものを反射させることで濡れた質感を与えています。
縦横比の変更
個人的に 16:9 (ハイビジョン放送画面アスペクト比)や 1:√2 (A判, 白銀比のひとつ)といった馴染みのある比率に縛られたくないけど何かしらの比率は用いたいので、今回は 5:7 を採用することにしました。高さはそれほどいらないけど正方形に近づけるほどでもないのでこの縦横比としました。
人物の仮塗り
線画に着手する前に仮の着色を行います。この絵では面倒が起こることはないでしょうが、たまに髪の塗る範囲を間違えたりするのでそれらの防止や、予め塗ることで色の与える影響を確認します。
形が目に見えて分かる細部の描写
人物を描く
自分より上手い人はいくらでもいるので彼等のチュートリアルを参考にしてください。個人的にこだわったのは線画をきっちり囲むのではなく陰影の補助としてどう使うかを考えています。
記号的な描写
重要ではない箇所を如何に楽して仕上げるかというコストを抑える工夫が必要になってきます。この絵の場合は背後にある家屋がそれにあたります。そして最初に塗り始めた範囲です。
ブラインドの表現は現物を見て描いていません。記憶したのは羽根の色とコードの位置だけです。必要範囲を塗りつぶし羽根の重なりとして簡単な影を加えて端の傾きを加え(ここではレイヤーを分割していないため影の色で塗りつぶす)ただけです。また羽根の間隔は目分量で溝を加えています。等間隔に直線をひく方法はありますがそれをするまでもない均一さが大して問われない箇所はこれで十分です。
この節の後述は pixivFANBOX の投稿に記載しています。
コンクリートの表現
欲しいのは苔むした色合いです。色味としては黄色っぽくなるので必要量練り込む感じになりますが、エアブラシみたいにぼかして散らすのではなくブラシの不透明度の手加減を調整して塗りつぶしていきます。コンクリートの汚れ具合の仕上げはこだわっても悪目立ちしかねないため軽く済ませたいのですが、それができずに描き込みすぎた気がしてならないです。
この節の後述は pixivFANBOX の投稿に記載しています。
細部の変更
ラフの段階では所有している写真から防火用水槽に木を描いてましたが、ストリートビューで確認したところその木がなくなっているため盛り付けを見直します(枝振りを描くのはとにかく面倒なので実は助かっている)。撮影が2017年9月なのでだいぶ茂り具合が変わっているかもしれません。
仕上げている最中に気づいたのですが、奥の玄関にカーテンがかかっているためそれも描き込む方針に変更しています。面倒なアイテムですが加えることで生活感が増すかもしれないので無理してみました。こうした事態が生じるので予定した制作期間から大幅に遅れます。
植栽の色合いについて
途中まで仕上げたところでこのまま暗い色で仕上げるのはよくないのではと思いボツにしています。暗い緑色を下地に葉の先端の白さを加えるとその色幅から目立つためどちらとも抑えて控えさせたいのですが、以前撮影した雨の日の写真があったため参考になりました。
写真は撮影者の都合によってかなり補正を加えているものなのであまり依存できないのですが色作りの助けには十分なるので、今回はこれを参考に若干鮮やかめの緑色を使っています。ただしハイライトまで真似してしまうと一気に強くなってしまうのでそこは控えた塗りにしたいです。
これで人物、防火用水槽・井戸ポンプ、建物と3つに大別できる色合いができあがりました。
井戸ポンプを仕上げる
いざ仕上げようという時に限ってバランスがおかしいと気付きラフを描き直すことになりました。この絵はありきたりな人物がメインの絵ではあるけど添え物として重要なのがその背後にある井戸ポンプと防火用水槽になるので、適当に済ませるのは避けたいです。
色について分かりにくい素材ですが、変色した塗装と錆とハイライトで主に構成されていて、特に描いている環境が雨天なのでハイライトが目立ちます。そこで色の落ちたと塗装の残っている範囲と錆びた範囲が混ざり合うように下塗りを施します。これでほとんどが決まるので、あとはブツブツした質感を出すために影を若干強めるために暗色を重ね塗りしたりハイライトを加えていきます。
最後に気になったので境界線を加えることにしました。これでだいぶ引き締まります。
最終仕上げ
記録することを前提としていなかったため抜けている箇所はいくつもありますし、自分は何とも思っていないことが他人にはやり方が気になるという場合も多いと思います。自分は他人に教えるのが苦手だし面倒くさがりなのでこうした発表しかできませんが少しばかりは参考になれればと思います。